2010年7月20日火曜日

SDLがLanguage Weaverを買収

SDL は7月15日に、機械翻訳ベンダーである Language Weaver の買収を発表した。
このトピックに関するプレスリリースとブログからコメントをピックアップしてみる。

プレスリリースによると、買収価格は$42.5Mで全額現金による買収である。Language Weaver(以下LW)は2009年における売上が$12.2Mに対して$1Mの損失を出しているから、売上に対して約3.5倍の買収価格となる。LWの96名の従業員を解雇する予定はなく、創業者であるDaniel MarcuとKevin Knightは留任、LWのCEOであるMark Taplingも留任すると発表されている。

SDLのCEOであるMark Lancasterは、今後5年ですべての翻訳コンテンツのうちの30%以上がMTをプロセスに組み込むと予想している。SDLでは、現在自動翻訳は翻訳市場の1%を占めるにすぎない(IDC予想)が、マーケット全体も自動翻訳の占める割合も大幅に増えていくと予想しており、自動翻訳の普及により顧客は翻訳単価の30%から50%の下落と同時に翻訳時間の50%以上の短縮を期待できると予想している。

SDL Announces Acquisition of Language Weaver 

LWに対しては複数のベンチャーキャピタル(VC)が投資していたが、その中で注目されるのはIn-Q-Telだろう。In-Q-TelはCIAの運営する非営利VCで、CIAの意向を反映して先端技術への投資を行なうVCとして知られており、かつてはGoogle Earth の開発企業だった Keyhole(現在はGoogleに買収)にも投資していた。9.11テロの翌年である2002年に創業されたLWはこれらの投資を受けて、主に米国政府に対してアラビア語ー英語間の翻訳を行なうサービスを提供してきたと考えられている。

Language Weaver Announces Second Strategic Investment and Contract from In-Q-Tel

LWは昨年4月からSDLとの間で販売代理店契約を結んでおり、今回LWを直接傘下に収めたことで同社のワンストップソシューリョンに統計的機械翻訳サービスを追加したことになる。SDLはこの買収によってLWの優れたソリューションをより多くの顧客に提供できると期待している。

Global Watchtower™ » Blog Archive » SDL Acquires Language Weaver http://bit.ly/dxcXEs

とはいうものの、かつてSDLはIdiomを買収してそのオープンな製品の長所をうまく継承できなかった(あるいは意図的に継承しなかった)という印象を持つ業界関係者も多く、SDLの顧客サポートでは顧客の満足が得られないのではないかという辛辣な見方も一部にはある。Renato Beninattoは、SDLが上場しているロンドン株式市場の投資家を喜ばせるためにソフトウェア開発企業の買収を繰り返すのだという皮肉な見方を披露している。

Localization Industry 411: SDL Acquires Language Weaver. First Reactions. http://bit.ly/bhWRZE

また、かつてLWでセールス&マーケティング担当のVPだったKirti VasheeはLWのSMT技術の優位性に疑問をなげかけている。Google Translateが提供する無償のアラビア語ー英語翻訳に対してすでにLWのMTは品質上の優位性を失っているのではないかという。さらにVasheeはLWが翻訳産業との連携を数年前から行っていない点を問題視している。MTの品質改善のためには翻訳業界の(人間の)リンギストとの協力が非常に重要だがLWはそれをやっていないと指摘している。

MTの市場を拡大するには品質が決定的に重要だが、LWのアプローチではそれは達成できず、その結果としてLWが米国政府以外への売上を伸ばせなかったとの解釈である。また、SDLについてはすでに3つもTMS製品を持っているのにその製品相互間のデータ交換すらロスなしには行えない点を指摘し、SDLが買収した製品をユーザーの利用しやすい形(オープンな仕様による容易な相互接続)で提供することはできないのではないかとの懸念を指摘している。

eMpTy Pages : Is SDL Getting Serious About MT? Does It Matter?